PROLOGUE

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美愛:「とはいえ、もうここ最近はお互い事務連絡みたいな感じになってるね。クリスマスかお正月には日本の一回戻るから、そのときにどこか出かけようか………みたいな話はしてるけど、正直、実家帰ったりもしたいし、どうなんだろう?」 真央斗:「にしてもあの姫島くんとね。まぁ、どんな感じかはなんとなく分かる気がするけど………」 美愛:「うん。真央くんの想像通りだと思う。高校の時から何にも変わってないから」 真央斗は電車の中で執拗(しつよう)に美愛に話しかける姫島を想像した。彼は(はた)から見ていても気持ちが強く我慢できない性格であろうことがよくわかった。いわゆる純粋に猪突猛進(ちょとつもうしん)タイプなのだ。おそらく告白されてはフられを何回も繰り返したのだろう。(もう)アタックの末、最終的にそれを受け入れた美愛もさることながら、彼の執念(しゅうねん)はすごいものであると言わざるを得ない。 真央斗:「なんか………人生どうなるかなんてわかんないもんだね」 美愛:「だねー。私もまさかパキスタンで働くことになるなんて考えてもみなかったもん。アラビア文字、全然でさ。大学の時勉強したから正則語(フスハ―)は日常会話ならなんとか分かるようになったんだけどね。だから真央くんいてくれた助かったー」 真央斗「正則語(フスハ―)分かるだけでも十分すごいじゃん。同じアラビア文字だけどウルドゥー語は難しいから。高校のときは色々助けてもらったし、まかせておけぃ」 美愛:「おおー!(たの)もしい!……あれ?そのミサンガ。どっかで見たことあるような……」 真央斗:「ああ、これ? これは、お守りって言うか、『ここで死ねないぞ』っていう自分へのいましめって言うか……最近になってだけど、自分が少し危ないときだけつけるようにしてるんだ。ある人がくれて、その人はもう覚えてないだろうけど」 美愛:「彼女? ちょっと、もう。私なに気に(こい)バナ聞かされ―――」
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