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こんなことがありながら、アッキの講義はいつも女子学生であふれ、前部席は寿司詰めだ。アッキの容姿だけでこんなに女子学生が集るはずがない。そう思うカンナは通信機アリスで女子学生の思いを調べた。すると、どの女子学生も異様な性的興奮を示している。
『アリス。どういうことなの?』
『皆、教授のテストステロン、アンドロステノンのフェロモンを感じ、エストロゲンの他に、セロトニンと大量のβエンドルフィンを放出しています』
『それって・・・』
『そうです。皆、教授に発情して、達しています』
『なんてこと!アッキはどう思ってる?』
『教授はカンナのことし考えていません。それが目的で若返ったのですから』
通信機アリスの声を聞き、カンナはほっとしたが、一抹の不安があった。
アッキが女子学生に関心を持たなくても、女子学生たちはアッキを放っておかない。いつもアッキのまわりに女子学生がいる。アッキが何もしなくても、女子学生のほうから何か仕掛けることもありうる。あるいは、アッキがちょっとした気の緩みで彼女たちと関係を持つことはないだろうか?
そんなことはあり得ない。アッキは私のために若返ったのだ。だけど、やっぱりまわりに集る女たちが気になる・・・。
「ねえ、アッキ。教室でも教授室でも、女子学生がたくさんいて、楽しそうね・・・」
カンナは帰宅したアッキにリビングでそう話した。
「そんなことはない。同じ事を質問されたり、考えればわかる単純な事を質問されてる。
女子学生の目的が僕なのはわかるから、カンナだけを愛していると宣言したよ」
「それでも、女に囲まれてうれしそうね。本音はどうなの?」
「迷惑してる。だけど、それを言ったら受講する女子学生が減る。最悪な場合は講義科目が減り、僕の収入も減る」
アッキは、講義の受講者が減った場合を深刻に考えている。
「ホントはまわりに女がたくさんいた方がいいんだね!そうでしょ!」
そう言い残し、カンナは自室に閉じこもった。カンナだって受講者が減ればアッキの講義科目が減り、収入が減るのはわかっている。しかし、嫉妬心がそれを上まわっていた。
アッキはあたしだけを愛してる。必ず謝罪に来る・・・。
カンナは自室にこもったままアッキが現れるのを待った。しかし、アッキがカンナの部屋に現れないまま夜が明けた。カンナからフェロモンがいっきに減少した。カンナはアッキと暮す意欲を無くし、家を出るために荷物をまとめはじめた。
以前の歳をとったアッキはカンナとしか付き合ったことがなく未婚だった。
そして、三十代の男に転生したばかりのアッキは、女の嫉妬心も知らず、怒った妻が部屋に閉じこもった場合の経験も無かった。アッキはどうしていいかわからなかった。
カンナをどう扱っていいかわからぬまま一晩悩んだアッキからもフェロモンが減少した。アッキは、カンナが家を出ようとしているなんて、これっぽっちも思っていなかった。
カンナの意識と精神、体調の変化は通信機アリスによって特殊通信機器メーカー・Aliceに送られ、そこから異星体・アイネクの小惑星型攻撃用球体宇宙戦艦内にある人管理施設へ転送された。特殊通信機器メーカー・Aliceは異星体・アイネクの人監視施設だった。
アッキの変化も、アッキの首に貼られた通信機ネックで小惑星型攻撃用球体宇宙戦艦の人管理施設へ送られた。
異星体・アイネクの愛情表現はフェロモンによる行動だけだ。
小惑星型攻撃用球体宇宙戦艦の人管理施設で、アイネクの分析官たちは人の複雑な精神と意識と思考、とりわけ嫉妬心を、どう分析していいか迷っていた。
(了)
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