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「あたし、アッキが居ないと生きてゆけない!」
カンナはこれまでの生活を思った。二十歳前から今日までどんなときも身近にアッキが居た。そしてあらゆる事を教えてくれた。愛しあうことも・・・。それがいつまでも続くと思っていた。だけど、まだあたしはアッキと愛しあっていない。アッキと愛しあいたい。
アッキが居ないと生きてゆけないと言ったがカンナには一抹の不安があった。
アッキは歳をとっている。世間体を気にする両親は、あたしがアッキと暮すことどころか、つきあうことも反対するだろう。
両親は、自分たちのすることを誰にも反対されず批判もされないまま無知無教養に育った。それなのに、いっぱしの常識人ぶって何ごとにも口出ししてきた。両親の目のとどかない所へ行かぬかぎり、あたしに自由はない。アッキと暮すためにあたしはどうすればいい?アッキはあたしどう思っている?
アッキはカンナの気持ちを理解していた。
「それなら、いっしょに暮らせるようにしよう」
「どうするの?」
カンナの目が輝いている。
「カンナは来年の夏、卒業して故郷のコンラッドにもどれ。それまでに故郷で仕事を見つけるんだ。僕が必ず迎えに行く」
アッキはそう言ってカンナを強く抱きしめた。新学期は九月からはじまる。
「わかったわ」
アッキに抱きしめられてカンナは身も心も溶けそうだった。
「ところで、カンナは僕で満足か?」
「どういうこと?」
「僕は歳をくってる」
「みんな歳をとるよ」
「若い人のほうが良いだろう」
「アッキがいい。誰にもわたしたくない」
「どうして?」
「あたしの事をずっと見ててくれた。いつもいっしょだった。
アッキはあたしと居たいと言ったでしょう。なのに、どうしてそんなことを言うの?
あたしでは不満なの?」
「満足してる。正直言うとカンナは生活の一部になってる」
「いつもあたしのことを思ってるの?」
「そうだ」
「なんで?」
「二人でいっしょにいろいろしてきた。僕には初めての事だ」
「あたしは初めてだけど、アッキもなの」
「そうだ。カンナは特別だ。だけど、歳が離れすぎてるから、親が難くせをつける」
「どうしたらいい?」
「僕が若くなっても、カンナは変らずに僕を好きで居られるか?」
「居られるよ。でも、若くなんてなれない」
「今日で今年度の僕の講義は終った。新年度から若い僕が講義するよ」
「どういうこと?」
「僕が若くなったら嫌か?」
「そんなことは無いけど、あり得ない。冗談言わないで!」
「僕を信じろ。そして、故郷に仕事を見つけ、卒業して故郷にもどるんだ。
僕が迎えに行く」
「ほんとなの?」
「僕を信じろ」
「早く愛しあいたい・・・」
「しばらくの辛抱だ」
「欲求不満になる・・・」
「これまでも会うのはここが主だったし、3D映像通信で話してた。
僕が迎えに行くまで、今までのように3D映像通信で・・・」
「ウン・・・」
カンナはアッキとともにソファーに横たわった。
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