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夏休みのあいだ、カンナ・フラッターは故郷のコンラッドシティで仕事を探した。
努力の甲斐があり、カンナは特殊通信機器メーカー・Aliceの採用試験に合格した。
人事担当者は合格者説明の個別ブースで、
「必ず卒業して我社に勤務してください。勤務開始時にプレゼントがあります。我社の特殊通信機です。楽しみにしてください」
カンナに目配せした。
カンナは通信機に興味が湧いた。
「どんな通信機ですか?3D映像通信機と同じですか?」
「人の心を読める通信機かあったらどうします?我社に入社すると誓約するなら、説明してプレゼンします。ただし、プレゼントに関して、今後いっさい他言無用です。
これらすべてを誓約できますか?」
カンナは即断した。
「わかりました。必ず入社します。プレゼントに関していっさい他言しません」
アッキの心を知りたい。アッキの思いを疑っているのではない。アッキはあたしを一番に考えている。アッキはいつも、あたしが最良の方向へ進めるよう考えている・・・。
アッキを思うだけでカンナはおちつけた。
「ではこの誓約書をID承認してください」
人事担当者はカンナに誓約書をわたした。カンナは誓約書を読んでID認証で承認した。
誓約書を受けとり人事担当者は説明する。
「これは人の脳波を捕捉して思考を読む装置です。我社の社員だけが所有しています」
人事担当者が薄い骨伝導型通信機をテーブルに置いた。
「見た目はありふれた電話用通信機ですが、あなたが見聞きしている相手の会話と思考がわかり録画できます。録画したくなければ思考で通信機だけの機能にできます。
つまり、装着した人の思考で機能が切りかわります。どうぞ装着してください」
人事担当者はカンナに通信機をわたした。
カンナはパッチのような通信機を耳の後ろに装着した。保護機能が働き、通信機はカンナの皮膚に同化してわからなくなった。
『頭の中に、私の声と通信機アリスの声が聞えるでしょう?アリスの指示に従って、思考で機能を選んで使ってください』
「わかりました。これなら操作が楽ですね」
カンナは人事担当者に答え、かんたんにアリスを使いこなした。
「では、通信機を通じて我社の情報を提供します。入社をお待ちしていますよ。
通信機はそのまま装着しててください。いろいろな機能があります。便利ですよ」
「ありがとうございます。必ず入社します」
カンナは礼を言って面接会場を出た。
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