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大学にもどった日の午後。カンナはアッキに会いにいった。教授室のドアを開けたが、アッキはいない。背の高い男がいる。
「もう帰ったのか。休みはどうだった?」
「先生は?」
「なに?」
「ダビド教授はどこ?」
「僕だよ。夏休みの前に話した通り、昔の若い僕にもどった」
歳をとれば容姿は変る。カンナは私の若いころの姿を知らない・・・。
アッキは若い身体に手を加えたことをカンナに話さなかった。
「若返ったの?本当に若くなったの?信じられない。それに・・・」
『アッキの思考を伝えますか?』
カンナに通信機アリスの声が聞えた。カンナは迷わず伝える。
『待って。アッキの話を聞いてからにする』
『わかりました』
若いアッキは、なんて素敵なんだろう!
カンナはアッキの容姿に見とれ、そして、アッキに抱きついた。
背も高いんだ・・・。あたしより頭半分以上も背が高い・・・。
カンナはアッキがどうして若くなれたか知りたくなり、顔を離してアッキを見つめた。
「どうやって若返ったの?」
「政府の特殊技術による肉体改造だよ。遺伝子操作して、三十代の私にもどしてもらった。
大学での立場はアッキ・ダビド教授の息子、アッキ・ダビド・ジュニアだ。
一年後にコンラッド大学に転勤だ。カンナととともにコンラッドで暮らせる」
「本当なのね?」
『アリス。アッキの考えを教えてね・・・』
カンナがそう考えると同時に、アッキの思考がカンナに流れた。アッキの言葉に嘘はない。カンナは安心した。
「本当だとも」
アッキはドアを施錠してカンナを強く抱きしめた。カンナは身も心も溶けていった。
「話があるの。コンラッドの特殊通信機器メーカー・Aliceに採用されたよ。これでほんとにアッキといっしょに暮らせるね」
ソファーベッドのカンナは、アッキの腕の中でそうつぶやいた。
「そしたらできるだけ早く婚姻届を出そう」
「えっ?あたしが卒業してなくていいの?」
「卒業してからがいいのか?」
「そんなことない!うれしい!
もう一つ話があるの・・・」
「なに?」
「特殊通信機器メーカー・Aliceから、思考を読む通信機をわたされたの。今までの通信機のように貼ってあるわ。ごめんなさい。さっき、アッキの考えも読んでしまった。アッキが別人ではないかと思って・・・」
「別人だったろう?」
「身体は別人、中身はそのままね・・・」
カンナはアッキに抱きついた。カンナは今まで以上に身も心も溶けていた。
「そうしたら、婚姻届をだそう」
アッキは異星体・アイネクのアッキ・ダビド管理官の意識を捨て、人として考えていた。カンナの生態データ収集と管理報告は、首に貼られた通信機ネックが全て行なっていたが、通信機アリスは通信機ネックの素粒子信号を解読していなかった。
「うん・・・。もうすこしこうしていてね」
カンナの身と心はまた溶けはじめた。
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