1人が本棚に入れています
本棚に追加
卒業アルバム
皆が将来の夢を語る中で、僕は語れる夢を持っていなかった。
昔はあったはずだけど、今となってはそれすらも覚えてない。
どこかに将来の夢を書いてはいなかっただろうか。
過去の自分が考えた夢を、まるで他力本願とでもいうように探した。
押入れの奥に追いやられていた小学校の卒業アルバムを見つけた。
引っ張り出して開いたアルバムの中には、子ども特有のふっくらした顔で映る自分の姿があった。
そんなものはどうでもいい。
僕は自分の顔に自信はないし、できることなら見たくない。
写真のページをすっ飛ばして、文集のページを探し出した。
自分の文集を探し出すにも、まず6年生の頃のクラスを覚えておらず苦戦した。
ほんの数年前のことのはずなのに、こうも覚えていないものなのか。
どうにか自分の文集を見つけた僕は、きれいとは言えないその文字を初めから読んだ。
小学校で楽しかったことをつらつらと書いていたその最後に、『将来の夢』という文字を見つけた。
『ぼくの将来の夢は、野球せん手です。それがダメだったら、ぼくは図書館で仕事がしたいです』
なるほど。
運動音痴の僕がどうして野球選手を選んでいたのかは謎だが、第2希望まで書いていてくれて助かった。
「よし、大学は司書資格がとれるとこ探すか」
僕の将来の夢が決まった。
最初のコメントを投稿しよう!