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ああ、今夜は良く晴れてる。
君と最初に会った日はすごい雨だったからね。
……何? なぜ、私が怖くないかだって? 怖いよ。幽霊は怖いし、肝試しは苦手だし。
でも、君はなんていうか……そんな感じはしないんだ。
いやいや分かってるから。そんな恐ろしい顔をしないで欲しいな。バカにしてるんじゃないんだよ。
ただ……この遊園地が懐かしくてね。もうすっかり廃墟になってしまってるけど。
ほら、そこの展望台。……昔、その展望台に有名な逸話があったのは知ってるかい?
そうか……知らなさそうだね……多分。もう30年も前の話だからね。
ほら、ここの金網に無数の南京錠があるだろう。ここに鍵をかけ、1年後に二人が持っていた鍵で解錠したカップルは未来永劫、幸せに過ごせるって。
僕?
そうだね、僕もしたよ。そんな話は眉唾だと馬鹿にしてたけどね。
でも……そう、彼女は本気で願ってた。
『僕達2人が未来永劫、幸せに過ごすこと』
そう、僕も願ってた。願ってた筈だったんだ。その時は。
馬鹿だろ?
1年もしない内に親達に無理矢理に別れさせられて見合い結婚させられて。
でも僕は結局、『しょうがない、これが大人になるってことなんだ』てわかった風なフリをして。
まさか、鍵を持ってた君が1年後、ここに一人で来て、その南京錠を抱えたまま飛び降りるなんて思いもしなかったんだ!
誰も教えてくれなかった……ずっと。ずっとだ。
知ったのはもう30年も過ぎていて……僕はもうお爺ちゃんだ。
なのに、君は変わらぬ姿でずっとここに居たんだ。
ごめんね、君が僕をあの世に連れて行ってくれるなら、それが良いよ。
約束を果たせなくてゴメン。
……どうして君は笑顔なんだい? そんなのはちっとも幽霊らしくない。
さっきの怖い顔はどこに行ったんだい……
どうしたの? 何か光が……どこへ行くんだい!?
え?
ありがとう、て、どうして!? 僕は君との約束を果たせなかったのに!?
思い出してくれたから……そんな!? 僕も連れて行っておくれ! ダメなのかい!?
嫌だ! ようやく君と会えたんだ! なのに、どうして……
ありがとう……本当にありがとう……君が好きだった。
『私も。好きよ。だから私の分まで幸せになってね』
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