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マガンがもったいぶった言い方をした。
「王族の……、というと、碧玉のことか」
「本物かどうか知らんが」
マガンの言葉を聞いて、アビは椅子に深く座り直した。
アビは、眉間にしわを寄せて、難しい顔をした。
「王族の所有する碧玉なら、必ず符呪がなされている。符呪師に鑑定させれば、真偽は簡単に判るが……」
「おいおい、見せてくれと言って、ほい、と渡すか? 自分の切り札をそんな簡単に見せるわけなかろう」
マガンが笑いを含んで答えた。
「それもそうだな」
「だいいち、符呪師なんぞ、いまだにおるのか?」
「おや、知らないのか?」
今度はアビがマガンに切り返した。
「何をだ?」
「ルリだよ」
「おや、ルリは符呪師だったと言うのか?」
マガンの表情を見る限り、本当に知らないことがアビには判った。
「それも、伝説の符呪師の直系というではないか」
アビは、ルリを養女にするにあたり、本人から直接聞いていた。
「初耳だな。しかし、ルリはもうこの世にいないではないか」
「それでな、ルリの弟子がいるという話だ」
「居場所を知っているのか?」
「いや、判らん」
アビは、苦笑交じりに言った。
「なんだ。結局、鑑定のやりようがないな」
「しかし、符呪師は、符呪された貴石に導かれて、現れるという話だ」
「向こうからやって来るのを待つのか? 気の長い話よ……」
マガンはあきれ顔で答えたが、気を取り直して、
「まぁ、碧玉の真偽はどうでもよい。彼奴らが事を起こすには、兄という存在がいれば十分だ。碧玉の真偽はさほど重要ではない」
と考えをまとめた。
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