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「案ずるな。宰相閣下もご承知の上だ」
「……」
ザノアにとっては満足のいく回答ではなかったようだ。
「おい、おい、そう怖い顔をするな。なに、念のためよ。事と次第によっては、アッカの出番があるかも知れぬ」
「アッカ様まで。ならば、承知しました」
「ひどい奴だな。アッカの名を出したとたん、承知するとはどういう了見だ」
「御館様とは、信用度が違います」
「気にいらんな」
「アッカ様は、御館様とは違い、お腹の黒いところがございませんので、ご自身でご出陣なさるほどせっぱ詰まった状況なのなら、その通りなのです」
「もう、よいわ。あほらしゅうなった。――確認の件、しかと頼んだぞ」
「承知しました」
岩塩戦争のとき元帥であったマガンは、戦況に応じて融通無碍に対処する能力の高さから『軍神』と恐れられていた。そのころアッカはマガン麾下の将軍として活躍していたのだ。
アッカが敵陣に突入していく様は苛烈の一言に尽きるので、『鬼神』と恐れられていた。
戦後になって、マガンとアッカの、まさかの結婚ばなしに、岩塩戦争での暴れ振りを見知っている人びとは、「妖怪と鬼が夫婦になった」と囃し立てたものだ。
家宰のザノアは、岩塩戦争時に、マガンとアッカの連絡担当の将校として活躍していた。
彼がそのような立場であったことを考えると、マガンとアッカの縁を結んだのは、この家宰なのかも知れない。
マガンから一週間遅れて、アッカが到着した。
王都の屋敷のほうで留守を預かる家人たちに指示を与えていたのだ。
「思った以上に、手間が掛かりました」
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