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「この辺りに百人を超える規模の野盗はいないはずだ。とすれば、おそらく最近組織されたやつらだろう。隊商が襲われているのを知りながら黙って見過ごすとなれば、俺たちの沽券に関わるしな。うちの旦那には、ここで待ってもらうとして――。まず、マヒワたちが行ってくれるか?」  ウトゥは雇い主である商人を「うちの旦那」と呼んでいるが、付き合いが長いので、ウトゥの采配に絶対の信頼を寄せている。 「おじさまは?」 「その小さい野盗が、俺たちをおびき出す囮で、本当の狙いは稼ぎの大きいこの隊商かも知れん。探索班が捉えていないので、付近に別の本体がいないとは思うが、念のためここで待機している」 「なるほど」 「あっちで襲っている隊商が小さすぎるんだよ。向こうの積み荷がよほど重要なブツか、先ほどもいったように、本当はこっちの旦那に用事があるのか……。そうでないと、二十人という人数を養うには、危険を冒す割りには稼ぎになっていない」 「それじゃ、まず軽く当たってみます。こっちの顔を見てすぐに逃げるようなら、深追いするのをやめて、すぐに戻ってきます」 「それじゃ、うちから五人連れて行け。マヒワと弟子たちと合わせて、八人くらいがちょうどいいだろう。大人数をみて、泡を食って逃げられたら意味がない。できるな?」 「おまかせを」  実はマヒワも、ウトゥと同じ違和感があった。武術家特有の(かん)というものだろうか。引っかかるのは、動き方をひとつ間違えるだけで、詰んでしまうような気持ち悪さがあるところか。  ウトゥは護衛隊から五人の名を呼んで、マヒワに付いていくように指示した。
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