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 呼ばれた五人が、マヒワの後ろに控えているアドウルとレイに並んだ。 「アーイ! トゥ! トゥ! トゥ!」 「ハイ! ハイ、ハイッ!」  マヒワの駈歩(かけあし)前進の掛け声に、了解のこたえが返ってくる。  マヒワを先頭に八人が砂塵を巻き上げて駆け出した。 「さぁってと、あの砂塵に誤魔化されて、おびき寄せられるかな……」  ウトゥが不敵に笑った。  どこかに隠れている野盗たちが、護衛隊の人数が減ったと思って、姿を見せてくれたらしめたものだ。  姿の見えない相手が、この先ずっとつきまとってくるより、いまここで決着をつけられたら、つぎの街までの旅程が楽になる。  ――十中八九、あいつらの狙いはこちらだ。  と、ウトゥの直勘(ちょっかん)はそう告げていた。  マヒワはテンの速度を緩めた。  この先の戦闘に備えて、馬たちを少し休ませるためである。  そこにスイリンが並んできた。  この先の隊商を襲撃している現場を見てきたのだ。 「スイリンさん、様子はどう?」 「真っ先に、隊長が()られました」 「まぁ、手順どおりね」  最初に指揮系統を混乱させるのは、襲う側からすれば、当然のことだ。 「襲ってるというより、なぶって楽しんでいますね」  スイリンが苦々しげに言った。 「――おとりだわ」 「はい?」 「そいつらは、ウトゥの護衛隊を誘き出すための囮です」 「あっ! 狙いは、こちらですか?」  スイリンの驚いた表情にマヒワが頷き返す。 「でも、おじさまの隊商を狙って潜んでいるはずの奴らが探索の網に引っかからないの。スイリンさんにも本隊付近での探索をお願いできる?」
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