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「承知しました。でも――」
「こちらは大丈夫。ありがとね」
マヒワは、スイリンに片目を瞑ってみせた。
スイリンは軽く頷くと、マヒワに襲撃現場の位置を伝え、離れていった。
代わりに後続の者たちが並んでくる。
「こちらのほうは囮です。野盗たちを片付けたら、あたしとアドウルは戻ります。残りはそのまま護衛を。指揮はレイさん」
手短に指示を出すと、縦列になって馬脚を速めた。
――いた!
遠眼の利くマヒワが弓矢を構えるのを見て、ほかの者たちは前方に目を凝らしてみたものの、全く判らなかった。
いまマヒワが手にしている弓は、護衛隊が武器庫にしている馬車の荷の中で眠っていたものだった。ずいぶん昔に騎馬民族から贈られた超長距離の弓だったので、だれも馬上で扱える者がいなかったのだ。
それをマヒワが見つけて、得意とする弓術の技をいかんなく発揮した。
通常の長弓より二倍強の飛距離を出し、しかも的に中てたのだ。
その場の全員がマヒワの視力の良さと卓越した技量に感嘆した――。
マヒワが馬上で件の弓に矢を番えて、両腕を開く。
風を読み、矢が放たれた。
矢の飛んでいく先を目で追って、初めて相手を確認できた。
ひとりが馬から落ちるのが見えた。
その頃には、はっきりと野盗たちを確認できるくらい近づいていた。
マヒワたちは鞘から抜いた剣を燦めかせて、突入した。
相手の背後に馬を巧みに回し、つぎつぎに倒していった。
野盗たちが状況を把握するまでに、速攻で数を減らす。
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