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野盗たちは、突然襲ってきた集団にだらしなく混乱するだけだった。
自分たちの頭目を探すが、いない。
ようやく見つけたと思ったら、頭目は矢を受けて、地面に転がっているではないか。
あっという間に、襲っていたはずの自分たちが、襲われるほうになっていた。
負けたと思ったら、逃げ足が速いのも野盗の特徴だ。
身の危険を感じた者たちは、散り散りに逃げ去っていった。
マヒワはまだ年の若い商人を見つけると、
「ウトゥの隊の者だ。護衛を付ける。指示に従うように」
と有無を言わさない。
商人のほうも、ウトゥの名を聞いて安堵したようだ。
「……し、承知しました」
商人が震える声でこたえるのを聞くと、マヒワはレイに頷いて、すぐに馬首を返した。
アドウルも遅れず、付いていく。
舞い上がる砂塵を目印に馬を急がせた。
やはりウトゥの隊が野盗たちの本隊と交戦していた。
まだこちらの存在に気づかぬうちに、マヒワは矢で射落とし、アドウルは剣で斬りつけた。
「アドウル――、騎乗の者を狙うときには、浅く斬りつけるか、叩き落とすこと。深く斬りつけたり、刺したりすると、剣が抜けずに自分も落馬するわよ」
マヒワの教えを思い出しながら、アドウルは剣を振るう。
アドウルはレイとともにマヒワに弟子入りして二年近くになるが、以前と比べて見違えるように逞しくなっていた。
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