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興奮した騎兵は、親と子をひどく鞭で打ち据えて、口角から泡を飛ばしていた。
仲間の騎兵たちは、事態を収拾させようともせず、にやにやと笑って、この行状をただ眺めているだけだった。
「その辺でお止めなさい!」
射貫くような声に、振り上げた騎兵の腕が止まった。
声の主は、騎兵の腕をつかむと、後ろ手にねじ上げ、膝裏を蹴り込んだ。
騎兵は抵抗するすべもなく、地面に跪く格好になった。
見れば、長い髪を後ろに一つに束ねた若者が、文字通り、騎兵をねじ伏せていた。
腰に剣を指していることから、剣術の修行者と思われた。
仲間の騎兵たちが色めき立った。
ざわつく騎兵たちを若者が睨んだ。
「ここは王都である。王の民に何をしている。貴様らの領民とは違うぞ!」
若者は鋭い視線を騎兵たちに向けながら言い放つ。
「子どもが飛び出したうえでの落馬事故ならば、王都守庁が所管する。打擲の件も含めて、王都守護庁の差配にゆだねるが、よろしいな」
といい、若者は騎兵の腕をさらに絞り上げた。
ねじ伏せられた騎兵は、先ほどとは打って変わって、情けない悲鳴を上げた。
ほか騎兵たちは、領主の判断を仰ぐため箱馬車へ顔を向けた。
箱馬車の物見窓に耳を寄せてうなずいていた一人の騎兵が、若者に馬を寄せてきた。
「貴殿の言い分、もっともである。子どもが飛びだして馬を驚かせたとはいえ、騎兵たる武人が馬より振り落とされる醜態をさらすなど、お恥ずかしい限り。その者の処分は、当方にお任せいただきたい。また、王の民を傷つけ、お騒がせしたこと、心からお詫び申し上げる」
このように口上を述べると、組み敷いている騎兵を解放するよう要求した。
若者は打擲されていた親子に目を向けると、震えて脅えきっていた。
若者が騎兵を突き放した。
仲間の騎兵たちが、逃げていた馬を引っ張ってきて、解放された騎兵を乗せると、別の騎兵が隊列の先頭に立った。
若者は道の脇によって隊列の進むのを見送った。
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