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一
羅秦国では、自然の中に様々な神性を見出し、己の信仰する神を家の中に祭って暮らしている。
太陽神を最上位とする神々の営みは、全国に散らばって存在する神殿によって管理されていた。
王都の東門から徒歩で半日ほど行ったところに、太陽神を祭る神殿があった。太陽神殿の神官長は他の神々を祭る神官長をも統括することから、『大神官長』と呼ばれている。
大神官長は太陽暦による暦を司り、国政に大きな影響力を及ぼすことから、王族のうち王位継承権を放棄した者がなった。
王弟のアビがその人である。
宗廟事変の際には、大神官長として祭祀に関わっていたことから、襲撃された幕舎にはおらず事なきを得たが、そもそも大神官長になった時点で王族から外れた存在となっていた。
マガンはアビと向かい合って座っていた。
ちょうど王都で貴族の隊列のひと悶着を見かけた直後のことである。
神殿内部の部屋の扉は、垂れ幕であるのが一般的なのだが、神官長の執務室などの重要な部屋は木製の扉で区切られ、機密性も高い。
二人は大神官長の執務室で会っていた。
当然、部屋からは余人を遠ざけている。
両者の間には、大きな机の上に羅秦国の地図が広げられていた。
「アドウル領の問題があった後に、同類の問題がないか、国内の私領を調べたところ……」
と言いつつ、マガンは指し棒で地図の上をなぞっていった。
その場所と範囲をみて、アビの表情が硬くなった。
「物流において、以上の者たちが明らかに不自然な動きを見せておりますな」
アビが腕組みをして、深いため息をついた。
「王都を包囲するつもりか……」
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