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虐殺ゲーム ~血塗られた教室~
僕は暗闇が嫌いだ。
昔、お父さんの実家に帰ったときに、蔵に閉じ込められたことがあったからだ。おじいちゃんの大切な壷を、不注意で割ってしまった罰だった。
おじいちゃんは怒ると怖かった。
罰と言っても実際は、30分ほどだ。蔵から出たあと、僕が謝ると、おじいちゃんは「これが他人のお宅だったら、大変なことになっていたぞ。今後、注意するように」と笑顔で許してくれた。悪いのは自分なので仕方がないと思った。
しかし、今の状況は僕が悪いのではない。机に突っ伏して、顔を上げてはいけない。いつまでこの地獄のような状況が続くのか。
誰か……助けて。
「じゃあ、次だ。佐藤の次は……高橋か。高橋はどこだ。顔を上げていいぞ。ほかの者は、うつ伏せをキープな。ヒヒヒ」
語尾が裏返ったように笑うのは、この男の口癖みたいだ。
教室中の椅子が、ギギッと床をする音がした。クラスメイトの緊張が伝わってきた。
「高橋! なぜ、反応しない。高橋 大輔。顔を上げて、前へ出てこい。でないと――」
直後に「やめて! い、痛い!!」と、女性の金切り声が、教室に響いた。担任の笹山先生の声だ。
「最初に言ったよな。俺の言うことに従わないと、この女教師の命がなくなるって」
ガタっと音がして「ぼ、僕です……」と、か細い男子の声が聞こえた。
――だめだ、大輔。行ってはいけない。出て行けば、先生より先にお前が……。
地面を摺るような足音が聞こえた。ゆっくり、一歩ずつ黒板の方へ向かっていく。
「やめて! 生徒に手を掛けるくらいなら、私を殺しなさい。この変態!」
先生、だめだ。
そんなことを言っても、聞くような奴じゃない。いたぶって、全員、殺すまで続けるつもりだ。先生に悲惨な状況を見せつけて楽しんでいるのだ。
「先生、ぼぼぼ……僕、怖い」
「さあ、名前を言うんだ」
教室の前方から男と、大輔の会話が聞こえた。見ることは許されない。
「ぼ、ぼくは、高橋、大輔だ。くたばれ、この変態野郎!!」
直後にドタドタと大きな物音がした。大輔が男に飛び掛かったのだ。殺されるくらいならと、イチかバチかで反撃したのだろう。
キャーと、先生の声がした。その直後に「ぐげっ」という、カエルが潰されたような音がする。
大輔の声はもう、聞こえなかった。そして、女性のすすり泣く声がした。
「反抗するから痛い思いをするんだ。これまでの連中は、首の動脈を一瞬で切ってやった。せめてもの慈悲だ。高橋君は反抗したので、苦しんで死ぬことになった。このあと、反撃してもいいが、覚悟はしておくんだな。ヒヒヒ」
小学4年生の力で勝てる相手ではない。
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