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「ねえ、パパ、昨日の続き読んで!」
私は布団に潜って父が来るのを待つ。
父は何か用事をしていても、私が読み聞かせをせがむといつも手を止めて来てくれるのだ。
本のタイトルは『アイとシンイチの探偵日記』だ。双子の姉弟が日常で起きる事件の謎を解く話。シリーズ物で、これが4冊目。1冊に謎がいくつか出てくる。双子は小学4年生なので読者も小学中学年から高学年が対象で、まだ小学2年になったばかりの私には難しい所も多々あった。
けれど、双子が喧嘩しつつも仲良く描かれていたことや探偵モノとはいえ、誰も死ななかったし、ラストは必ず幸せな気持ちになる所が大好きだった。
「このお話作った人って、春田五月っていうお名前なんだ……なんか変わった名前だね」
「そうだなぁ〜、これは本当の名前じゃなくてお話を書く時だけの名前なんじゃないかなぁ〜」
「そうなの?」
「うん、それをペンネームって言うんだよ」
「ぺんねぇむ?じゃあ、なんでこんなヘンテコお名前にしたのかなぁ?」
「5月生まれかもしれないね」
「じゃあ、はるひとおんなじだね!」
父はなんだか楽しそうだった……。
だけど、父の顔がなぜかぼやけている……。
パパ、ちゃんとお顔を見せて!パパ……。
機内アナウンスで目が覚めた。
薩田さんへ私の目印をメールしようとしていたら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
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