愛おしい人

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新千歳空港の到着ロビーに着いて、周りを見渡しているとひとりの女性が近づいてきた。 「新名春陽さんですよね?」 私に声を掛けた女性はカジュアルコートに千鳥格子のショールを巻いていた。 「あっ、薩田祐子さん……」 なんですぐ私がわかったのだろう? まさか、向かうから来てくれるとは思いもよらなかったので上手く言葉が出なかった。 自家用車で自宅へ向かうということで、駐車場までついていく。その間、彼女が北海道について話すのを私はただ相槌を打つのみだった。 明るくて人懐こいというのが薩田祐子の第一印象だった。 空港から約1時間、軽ワゴンの中でも世間話は続いた。私もだんだん祐子のペースに巻き込まれ、笑いさえ起こっていた。 しかし、到着が近づくにつれ、別の不安が私の心を支配していった。 祐子が父の妻だと確定したのだから、父に会うことになるのだろう。 そんな心構えはしていなかった。
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