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「ちょっと、これって春陽のペンネームじゃん?どういうこと?!まさか盗作?!でも春陽はミステリーしか書かないよね?」
周りを見ながら小声で騒ぐ早耶だが、私自身も訳がわからなかった。
本のタイトルは『愛しい人』だった。
私が出版社の編集者になりたかったのは、有名作家の担当になり自分もゆくゆくは小説家としてデビューするという目論見があったからだ。
それまでも小説投稿サイトに投稿はしていたものの書籍化の夢は叶えられていない。
その私のペンネームが『美知ハルキ』だ。
私はおそるおそるソフトカバーの表紙を開いた。
ー私の夫が生涯愛したMとその娘Hに捧ぐー
「これって、ひょっとして?」
早耶の勘はきっと当たりだ。
Mは私の母、Hは私。
だとすると、これを書いたのは父の不倫相手だろうか?
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