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赤子が川の側の土手に捨てられていた。
それを一人の男が拾った。蜥蜴のように狡猾そうな顔をした痩せたその男は、赤子を自分の家に連れ帰り何人もいる妾に育てさせた。
赤子が五歳になると、男は子供に盗みを覚えさせた。最初は食べ物を盗むのから始まった。何度も捕まったがその度子供は男から教わった上手い言い訳を並べて逃げた。
やがて男は子供に高価な金物や宝石を盗ませる様になった。
盗みが上手くいくと男は子供を褒めて上手いものを腹一杯食べさせた。だが失敗すると血が出る程殴り真冬でも関わらず外に出して、泣いて懇願しても家に入れず食べ物を与えなかった。そうして傷つくうち子供は学んだ。人を上手くだし抜き悪事を働いて生きる術を。男は悪党だったが子供にとっては父親だった。言われた仕事を完璧にこなせば愛して貰え食べ物ももらえる。父親から褒めて貰う為に子供は盗みと嘘が上手くなり罪を重ねた。
妾の女の一人に霊力が強く占いやお祓いのできる女がいた。子供はその女の言動をそっくり真似し、やがて嘘の占いによって人々を騙して金を稼ぐ様になった。その方が盗みより確実に大金を手に入れられたし失敗する確率は低かった。出鱈目の予言に気づかない人々は子供を「神の子」と称え金を払った。
満足した育ての親は子供を可愛がった。
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