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翌日平八の元に一人の男がやってきた。男は借金をして食べるものがないと泣きついた。
平八は試しに水晶を掌に乗せ男の胸に近づけた。
すると水晶は美しい緑色に光りある映像を映し出した。映っているのは齢五つ程の少年だ。両親と笑いあって飯を食べている。
映像はやがて、水害で両親が死に悲嘆に暮れる14歳くらいの少年に移り変わる。彼はその後親戚に引き取られるが叔父から乱暴され、家を出て漁師の仕事を始めたが脚を怪我して働けなくなる。そんな男を愛する一人の女性が現れたが、その女は病で倒れやがて帰らぬ人となり男は嘆き悲しむ。
映像が消えると美しい緑の水晶のみが残る。
平八は見たものをそのまま男に伝え、「辛かったな、だがこれから良くなる」と声をかけると男は涙を流し喜んだ。
平八はその後も同じようにして村人を占った。水晶に映る村人の過去の色は赤、水色、黄色など一つとして同じ色はなかった。噂は広まり彼を邪険にしていた人々はまた平八の家に集まり始めた。
集まった様々な色の水晶を隣町の質屋に売った。その店は質屋と名乗っていたが曰く付きの品物も買い取っていた。水晶はかなりの値になったが平八は満足していなかった。もっと高値で売れる水晶——金の水晶が欲しかった。
平八は考えた。もしかしたら李翔ならその色を持っているかもしれないと。
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