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「一体どうなってんだ?!」
平八が訊くと李翔は言った。
「人の過去の記憶には複雑な感情が詰まっている。後悔、懺悔、恨みや憎しみ、悲しみなどだ。水晶に閉じ込めた過去の記憶が時間を経て禍々しい念となり店主の魂を食い尽くした。そして沢山の人間の念が一つになりあの化け物を生んだんだ」
李翔が外にに出ると大蛇は空を飛び家を壊し人々を襲っていた。逃げ惑う人々の叫び声が響き町は地獄と化していた。
平八は這いつくばり何とか店から逃げ出したが、町の惨状にこれが自分の招いた事かと愕然とした。
李翔は道に長い棒で大きな結界を張り大蛇を待ち構えた。
やがて大蛇は上空から李翔の姿を捉えた。
蛇が襲いかかってきた時李翔は例の不思議な響きの呪文を唱えた。そうして結界の前で蛇の動きを封じた後腰から細長い刀のようなものを取り出した。刀からは青い炎のような光がゆらゆらと立ち上っていた。李翔は短い呪文を叫ぶと、刀を大きなバツ印を描くように二度素早く振り下ろし大蛇の黒く禍々しい身体を切り裂いた。
耳が張り裂けそうな凄まじい断末魔の叫びの後、蛇は黒い煙に変わり四方に飛び散った。代わりに赤、緑、青、黄など美しい光の玉が現れた。その玉たちは宝石店の方へゆっくりと飛んでいき、各々の水晶の中に吸い込まれていった。
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