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恒星スピカ圏の外延部を回遊する鉱床惑星アーシアβの放棄が決定されたのは昨年のことだ。予期せぬ急激な寒冷化、ならびに原因不明の公転軌道不安定化により、鉱山プラントモジュールの長期維持が困難になった、というのが表向きの理由だ。それ以外にも、プラント自体の生産高が当初想定を大幅に下回り、今後も短期での向上が見込めない、その点も大きな決定要因になったことを、鉱床諸学を専門とする私は個人的に知っている。
半年以内の惑星放棄と、近隣恒星圏への人員移動の指令がくだったのが、本惑星カレンダー上の昨年の夏。(とはいえ、夏でも日中の最高気温はマイナス12度程度だ。基本的にこの惑星上では、真夏であってもプラスに気温が転じることは稀だ。)
もともと惑星上の生産人口自体がたかだか知れている。撤収作業は迅速に進み、明日を最終期限とする撤収計画は特段の問題もなく終わる。明日の午後に、第4指令センターの発射庫から射出される最終第15次の星間移動シャトルが、プラント都市に最後に残った四百名ほどの人員を回収し、それをもってこの惑星の人間人口はゼロとなる。
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