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「どこにも、行きたくないんです」
θ2117―― ニーナが、私の方を見ることもなく。ただ遠い眼下の都市の光を見ながら小声で言った。
「私は、この星が好きなんです。だから。行きたくない。ただ、それだけです。だってここは、私の生まれた星なのですから。ここが私の、故郷です」
彼女の口から吐き出された白い呼気は、零下30度の大気の中でたちまち氷結し、大気の揺らぎの中に拡散していく。
故郷、などという前近代的な古語が飛び出してきたからだろうか。私は何も、反応できない。
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