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三
△△国の状況を懸念した〇〇国大統領は、執務室に副大統領を呼んだ。
「△△国はウィルスから自国を救い、他国を救うふりをして壊滅する気だ。
前大統領が△△国ウィルスなどと口を滑らせて冷や冷やしたが、これからは、我々の生物科学が世界を支配する・・・」
〇〇国大統領はそう言い、さらに話をつづける。
「△△国に端を発したウィルスは全世界に拡まり、各国が、ウィルスの起源を自然発生的だと思ってウィルス対策がなおざりになっている。
各国政府も国民も、
『ウィルスが非常に危険で国家の存続を脅かしている』
と考える者は非常に少ない。
このことが何を意味するか、君はわかるかね?」
大統領は副大統領に返答を促すように見つめた。
「・・・・」
副大統領は大統領がいわんとすることを理解していたが答えなかった。
「なあ、トム。
気楽に話していいんだ。
ここには私と君しかいない。
今日の仕事は終りだ。
一杯飲みながら話そう」
大統領はみずから隣室のバーカウンターへ行き、ウィスキーグラス二つと年代物のスコッチウィスキーを持ってきて副大統領が座っているソファーのテーブルにおいた。
ソファーに座った大統領は、グラスにウィスキーを注ぎなからつぶやいた。
「ウィルスは感染するたびに変異する。
ワクチンや薬を作っているあいだに変異する。
感染が拡大している現在、医療体制は対応できなくなっている。
人々は、ウィルスの発生源が自然界だと思って免疫ができるのを期待する。
これが我が国の現状であり、各国の現状でもある。
そこでだ。
ある人種の遺伝子でウィルスが爆発的に変異し、急速に感染した結果、ある人種が滅んだとしても、ウィルスの発生源が自然界なら、国家の滅亡は疑われない・・・」
大統領は、ウィスキーを満たしたグラスをソファーテーブルの副大統領の前に置いた。
「私は君に、時期も副大統領になってもらいたいのだよ・・・」
大統領は、
『私の意を理解するならグラスを空けてほしい』
と思いながら、副大統領を見た。
副大統領はグラスを取った。
『ウィスキーを飲めば、十数億の人間の殺戮を承諾したことになる。
飲まなければ、極秘政策保持のために私は抹殺される・・・』
副大統領は大統領とグラスを合せ、いっきにウィスキーを飲み干した。
大統領は指示する。
「早く、ウィルスとワクチンを作らせろ。
奴らは生物兵器を開発したのだ。
それが△△国本土から拡がったんだ。
全世界を攻撃したのだ!
奴らだけを攻撃するウィルスを開発しろ!
△□民族の遺伝子を解析して、ヤツラだけが感染するようにしろ!
ウィルスが完成すれば、核兵器のような放射能汚染はなくなる」
大統領は、現在感染が拡大しているウィルスのワクチン開発と、新たなウィルス開発を急がせた。
いつしか△△国と〇〇国の情報は各国に拡まった。
地球上のあらゆる国家が、密かに核兵器に代る生物兵器開発に着手したが、生物兵器は使われなかった。
現在のウィルス対策だけで各国が疲弊し、国家存続の危機に瀕していることが明らかになりつつあったためだった。
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