【プロット】奇跡の書店月読堂

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古書店「月読堂」は、鎌倉の閑静な住宅街にひっそりと佇んでいた。 店主の老人は、いつも静かに本を読み、訪れる客を温かく迎えてくれる。ある雨の日、僕は偶然この店に迷い込んだ。 店内には、古書特有の香りが漂い、無数の本が所狭しと並んでいた。 その光景に心を奪われ、時間を忘れて本棚を巡っていた。 ふと、一冊の本に目を留めた。 それは、革表紙の古い本で、タイトルは擦れた文字で「運命の書」とあった。 その本に不思議な魅力を感じ、手に取った。 ページを開くと、そこには、びっしりと手書きの文字が記されている。 まるで誰かの日記のようだった。 その内容に引き込まれ、読み進めていくうちに、不思議な感覚に襲われた。 日記には、僕自身の過去から現在、そして未来が書かれていたのだ。 まるで、この本が僕の運命を握っているかのように。 恐怖と好奇心に駆られ、一気に最後まで読み終えた。 そして、最後のページに書かれた言葉に、言葉を失った。 「この本を読んだあなたは、運命を変えることができます。  しかし、代償にあなたの大切なものを失います。」 本を閉じ、店主の老人を見つめた。 老人は、静かに微笑みながら、僕に語りかけた。 「その本は、あなたにとって、運命の一冊となるでしょう。  しかし、その運命を受け入れるかどうかは、あなた次第です」 僕は、しばらく悩んだ末、本を購入することに決めた。 そして、店を出て、雨上がりの街を歩きながら、本を開いた。 日記には、これから僕が経験するであろう出来事が、克明に記されていた。 その内容に驚きながらも、未来を変えるために、日記に書かれた通りに行動し始めた。 しかし、それは、大きな間違いだった。 日記に書かれた通りに行動するたびに、私は大切なものを失っていった。 友人との絆、恋人との愛情、そして、自分自身の夢。 絶望に打ちひしがれ、全てを諦めようとした。 その時、日記の最後のページに書かれた言葉を思い出した。 「運命を変えることができます。  しかし、その代償は、あなたの大切なものを失うことです。」 私は、初めてその言葉の意味を理解した。 運命を変えるということは、同時に、何かを失うということなのだ。 日記を閉じ、海辺へと向かった。 そして、波打ち際で、日記を燃やした。 炎が、日記を包み込み、灰となって飛び、海へと流れていく。 僕は、空を見上げた。 雨上がりの空には、虹がかかっていた。 それは、まるで、新たな始まりを告げているかのようだった。 僕は、ゆっくりと歩き出した。 もう、日記に頼ることはない。 僕は、自分の力で、自分の運命を切り開いていく。
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