本編

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フミは頭上に手を伸ばし、赤いリボンの付いたカチューシャを整えた。 店の硝子に微かに映る姿に目を凝らすが、良く見えない。 膝丈の黒いワンピースの裾を両手で持って見下ろす。 ちょっと短すぎないかなぁ…… フミは顔を上げて硝子の向こうを見た。 赤ずきんや背中に羽を背負った天使の扮装をした女の子達が眩しい笑顔を浮かべながら歩いて行く。 出来るならもうちょい可愛いのが良かったけど…… 「仕方無いよね、主催者側だし」 フミは独り言を呟いて扉の鍵を開けた。 イーゼル型の看板を外に出し、扉に掛けられたcloseの札をひっくり返す。 「フミちゃん、おはよう」 正面に店を構える婦人服店のおばさんが、店の前を箒で掃いていた手を止めて声をかけた。 「おはよう~、田中のおばさんカッコ良い!マレフィセント?」 「マ?違うわよ、白雪姫の継母らしいわよ。おばちゃんもっと素敵なのが良かったんだけどねぇ……ヨシハルがこれを着ろってさ」 「充分素敵です!」 そう?おばさんは満更でもなさそうに微笑む。 「フミちゃんも可愛らしいじゃない、魔女ちゃんでしょ?箒を貸そうか?」
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