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「本当に止めてくんない?俺は皆が言うような軽い男じゃないからね」
「良くいうよ、バッチリ見られてんぞ、お前の節操のない振舞いはな!……と言っても、本日はそのコマシ才能をフルに発揮して女の子達をこっちに誘導してくれ」
「だから、そう言うのは気が進まないって……」
フミは扉を押して店内に逃げ込んだ。
扉に寄りかかり、そっと唇に触れた。
八反さんのドラキュラ……格好良かったな……
本当にあんな人とキスをしたんだろうか。
しかし、気を抜けば、あの日聞いた荒い息遣いと唇の感触がリアルに甦ってくる。
記憶はどんどん曖昧になるのに、身体は覚えているのだ。
フミは頭を振って頬を叩き、気合いを入れ直すと、景品用のクッキーの補充に取り掛かった。
通りが夕焼けで橙に染まる。
練り歩く仮装した男女は一斉に右の方向へ向かっている。
そろそろ街コンのメインイベントが始まるのだ。
それぞれの店舗やオリエンテーションで交流を深めた男女が中央広場に集まり、ビンゴや仮装コンテストを楽しみながらのフリータイムを経て投票。
八反は中間投票で投函されたメッセージカードを、大量に獲得しているという。
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