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突きつけられた現実に、未練がましく僅かに残していた希望も打ち砕かれた心地がした。
「フミちゃんよね?まだかぼちゃプリン残ってる?ケントからプリンが凄く美味しいって聞いてるの。お土産に買いたいなって思ってたのよ」
フミは顔を上げた。
「ケントさんから取り置きで聞いてますよ。販売用は全部売り切れちゃったんですけど、予備があるので…...今お渡ししても?」
ここで渡してしまえば八反が店に訪れる手間が省けるだろう。
それに、今日、もう八反には会いたくない。
「いいの?!」
フミは店に急いで戻り、シンプルなプラスチックの器に入ったかぼちゃプリンを5つ箱に入れて、店を出た。
「ありがとう、フミちゃん」
美女は笑顔で受け取った。
時刻は8時を回り、フミは片付けを始めた。
街コン帰りの女の子達が半額にしたケーキの殆んどを買ってくれたお陰で、ショーケースはほぼ空っぽだ。
看板を下げようと扉を開いたところで、呼び掛けられた。
「フミちゃん」
その声に肩が跳ねる。
「八反さん、あの、カボチャプリンは助っ人さんにお渡ししたので……」
「うん、聞いたよ。ありがとう」
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