本編

13/32
前へ
/34ページ
次へ
突きつけられた現実に、未練がましく僅かに残していた希望も打ち砕かれた心地がした。 「フミちゃんよね?まだかぼちゃプリン残ってる?ケントからプリンが凄く美味しいって聞いてるの。お土産に買いたいなって思ってたのよ」 フミは顔を上げた。 「ケントさんから取り置きで聞いてますよ。販売用は全部売り切れちゃったんですけど、予備があるので…...今お渡ししても?」 ここで渡してしまえば八反が店に訪れる手間が省けるだろう。 それに、今日、もう八反には会いたくない。 「いいの?!」 フミは店に急いで戻り、シンプルなプラスチックの器に入ったかぼちゃプリンを5つ箱に入れて、店を出た。 「ありがとう、フミちゃん」 美女は笑顔で受け取った。 時刻は8時を回り、フミは片付けを始めた。 街コン帰りの女の子達が半額にしたケーキの殆んどを買ってくれたお陰で、ショーケースはほぼ空っぽだ。 看板を下げようと扉を開いたところで、呼び掛けられた。 「フミちゃん」 その声に肩が跳ねる。 「八反さん、あの、カボチャプリンは助っ人さんにお渡ししたので……」 「うん、聞いたよ。ありがとう」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加