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フミは溜め息をついた後、覚悟を決めた。
朝よりハッキリとショーウィンドウに映る自分の姿を見る。
ボブカットの頭上に真っ赤なリボン、膝丈のゆったりしたワンピース。
魔女というより魔女っこだな、これは。
どうしたって大人っぽくはなれない。
どうせなら、ピエロの方が良かった。
割りきって道化を演じれたのに。
外の灯りが消えた『アサール』の店の前で、フミは深呼吸をした。
思い切って扉を押すと、扉に近いテーブル席に腰掛けていた八反が立ち上がる。
「フミちゃん!」
あまりの勢いに仰け反るフミに近付き、八反は腕を取って店に引っ張り込んだ。
フミの両腕を掴んだ八反は俯いて息を吐く。
「……良かった。来てくれた」
「もしかして待たせちゃいましたか?すみません」
「いや、俺が勝手に待ってただけ。来てくれないかと思って気が気じゃなかった」
「大袈裟ですよ……えっと、八反さんだけですか?」
フミは店内を見回した。
「助っ人の方は……」
八反は顔を上げる。
「ああ、姉ちゃんには帰って貰った」
フミはその予想外の返事に驚き、瞬きをした。
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