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「あいつら向こうの暮らしが長かったせいか、やたら抱きつくんだよ…だけど、俺は違うよ。日本生まれの日本育ちで、呆れるほど純朴な成年男子だ」
きっと、そんなに純朴でもない。
だって、つまり、帰らないでと言うことはそういうことだろう。
いくら長い片想いだからと言って、直ぐにそういう関係に持ち込むとこがなぁ……やっぱり怪しいよな。
「八反さん、仮にも私達は同じ商店街で働くもの同士です。なるべく気まずくなるのは避けたいのが正直なところなんですけど」
「気まずくなる……ってどうして?」
八反は卓袱台に伏せた顔をくりんと横に向けてフミを見た。
「破局しちゃったら……」
「付き合う前からそんな悲しい事、言わないでよ」
八反はフミの袖を掴む。
「フミちゃん……トリック・オア・トリート」
「もうプリン食べちゃいました」
「じゃあ、悪戯して良い?」
フミは、卓袱台に頬をつけて縋るように見上げる八反をじっと見た。
……可愛い。
「私、まだ返事してませんよね?」
「だって、この間チュウしたもん。嫌じゃないって事だよね?ね?」
フミはプイと顔を逸らした。
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