本編

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「無いです、無い、無い。お店で働けるのは嬉しいけど」 「じゃあさ、フミちゃんは俺が貰って良いかな」 思いがけない言葉にフミは八反を見て固まった。 「フミちゃんの作るクリームプリンの大ファンなんだよね。店で出したいんだよ」 フミは、一瞬浮わついた心を誤魔化すようにグラスを手に取る。 「そういうことなら、師匠に話して貰えば……」 「そう?俺のとこにスカウトして良い?」 「プリンならどれだけでも作りますよ」 「プリンだけじゃないよ」 八反の手がフミの髪に触れた。 「フミちゃんが欲しい」 フミは驚いて八反を見る。 八反は真剣な表情をして、フミを見ながら手に取った髪に口付けた。 お、おう……さすが異国の血が流れるイケメン。 普通の人がやったらイタイだけの気障な素振りも、やけに絵になる。 映画かドラマみたい。 「や、やだなぁ、八反さんってば、流石ですね。勘違いしちゃうから止めてくださいよぅ」 フミは、髪を引っ張った。 「本気だけど?ずっとフミちゃんのこと狙ってたんだよ俺、気付かなかった?」 八反はずいっと身体を近付ける。 フミは身体を反らすが、その背中に手を回された。
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