19人が本棚に入れています
本棚に追加
「二人で話せる機会をずっと待ってた」
至近距離で八反が囁く。
フミは、目の前にある甘く整った顔に見惚れた。
「俺のこと、どう思う?」
「ど、ど、どうって、八反さんは、か、カッコ良いです」
「それだけ?」
「えっと……」
動揺して激しく瞬きするフミの頬に八反の節ばった手が添えられる。
「フミちゃん……」
更に近付く顔、長い睫が伏せられるのを見た後、唇に柔らかいものが触れた。
優しく何度も食む唇に、フミは目蓋を震わせる。
ゆっくりと官能を引き出すように激しくなるふれあいに、フミは懸命に呼吸を合わせ、八反の肩に手を置いた。
くちゃくちゃという卑猥な音がフミの身体を昂らせていく。
荒い息と背中を撫でる手。
終わらない長い口付けに、フミの頭がぼうと霞んできた。
「フミちゃん、上に……」
チリンチリンッ、
来客を告げるドアベルの音に、フミは、バッと八反から身体を離した。
「ちょっと待ってて」
八反はフミに囁くと、エントランスへ向かう。
フミは煩く鳴る鼓動を押さえて、踞った。
今しがたまで、八反としていたことが、にわかに現実味を失っていく。
まさか、あの、八反さんとこんなことに?!
最初のコメントを投稿しよう!