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「流石ですね、八反さんに全部持ってかれないように頑張らなきゃ」
死神に扮した八百屋の光輝の腕を叩いた。
「誰も掴まえられなかったら、フミちゃん、慰めてくれる?」
「考えときます」
八反の視線を感じたが、気付かないふりをした。
「『ぴよこっち』の目玉商品はかぼちゃプリンだっけ?売れ行きはどう?」
八反がフミの側に近付いて身を屈める。
フミはそれとなく視線を反らして答えた。
「えっと、午前中で半分以上は出ました。他のケーキの売れ行きも順調です」
「かぼちゃプリンの取り置きは出来るかな?」
フミは顔を上げて八反を見る。
「あー、予備に作った分があるので、それを差し上げましょうか?カップの形状は違いますけど」
八反は嬉しそうに頷いた。
「お店に届けておきます」
「いや、後で取りに行くよ」
八反は有無を言わさぬ口調で答える。
「あ、はい……」
フミは目を見開き、小さく頷いた。
「じゃ、皆さん、頑張ってください」
フミはそそくさとその場を後にした。
「お前、ところ構わずフェロモン振り撒くなよ。フミちゃん困ってたじゃねぇか。女には不自由してないくせに」
背後から誰かがぼやく声がする。
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