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25 宙域戦闘
旗艦〈ユウロビア〉がレーザービームネット(広角で多数のレーザービーム)のように対艦レーザーパルスと対艦粒子ビームパルスを放った。
我が艦の位置も姿も大きさも、状況を何も掴んでいない。闇雲に攻撃しているだけだ。
敵艦隊AIをハッキングしてある。敵艦隊はこの時空間を全て把握していると判断しているが、敵艦隊の判断はAIが感知した時空間だ。その時空間には0次元は存在しない。従って0次元に物体が存在した場合、全てが「無」なのだ。
現在。敵艦隊のAIはハッキングによって我が艦隊の存在空間を0次元として入力してある。これで敵艦隊と誘導兵器は自動的に進路を補正して0次元空間を避けて移動する。
一方、ビーム兵器から放たれたビームはAIの指示とは無関係に直進し、敵艦隊は敵艦隊のAIの3D座標上で、何も存在しない時空間内で、我が艦の多重位相反転シールドで吸収される レーザーパルスと対艦粒子ビームパルスを見ることになる。
その結果、多重位相反転シールドでステルス状態になっている我々の艦隊の存在が明らかになってしまう。
即時に我が艦隊のAIのPDが反応した。我が艦隊が0次元空間として敵艦隊のAIに認識させた時空間に対艦レーザーパルスと対艦粒子ビームパルスが到達して、我が艦の多重位相反転シールドに吸収されると同時に、それと同等の対艦レーザーパルスと対艦粒子ビームパルスをあたかもその時空間を通過したかのごとく放った。敵艦隊のAIは0次元空間の存在に気づいていない。
旗艦〈ユウロビア〉の攻撃をやり過ごすか、それとも反撃するか、今はやり過ごすしかない状況だ。
いつになるかはわからないが、旗艦〈ユウロビア〉との交戦は避けられない。叩くなら今だ。対艦レーザーパルスと対艦粒子ビームパルスは旗艦〈ユウロビア〉の位相反転シールドで退けられるが、レールガン(磁界加速器装備)や物理的誘爆装置のミサイルは位相反転シールドでは避けられない。しかしミサイルは飛行速度が遅いため敵艦は逃亡する。
「ターゲットはフェルミ艦隊。距離36000キロメートル。
距離が遠すぎる。距離1000キロメートルまで接近してレールガンを使う!
メテオライトに迷彩した10キログラムチタン合金弾を連射する!
レールガンに10キログラム弾を装填しろ」
高速運動量弾は秒速1000キロメートルだ。ターゲットの距離が36000キロメートルでは着弾間で36秒かかる。フェルミ艦隊の逃亡に充分すぎる時間だ。
「ターゲットの距離1000キロメートル。
レールガン発射!
着弾・・・」
(了)
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