あつめる

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 代表の鞍馬口、チーフエンジニアの今出川、マーケティングの松ヶ崎、資金繰りの北山は連日深夜まで議論を繰り返していた。 北山 「知識レベルが低すぎだ。それに、30分の作動時間は許容できるにしても冷却ボックスは大袈裟だ。これでは投資家や支援者に説得力ある説明ができない。商品化は難しいな」 松ヶ崎 「顧客を一人暮らしのお年寄りにフォーカスするのはどうだ?彼らが孫とおしゃべりするようなイメージだ。これからますます高齢化社会。ターゲットは巨大だぞ」 今出川 「なるほど。それなら、冷却ボックスの件は外観を銭湯にするのはどうだ。ロボットの体型はもともとぽっちゃりしてる。顔を愛嬌あるものにして着ぐるみを着せればいい。共に技術的には簡単だ。疲れたロボットが風呂につかるイメージだ」 松ヶ崎 「おっ。なかなかいいかもな。お年寄りには外観の馴染みやすさ、共感も大切だ。そうするとロボットの頭に乗せる手拭いも品揃えがいるな」 北山 「肝心要の感情への対応はどうする。何と言ってもこの商品の目玉。顧客は話し相手、つまりお年寄り。彼らに対するリアルな喜怒哀楽の感情表現は肝中の肝だ」 松ヶ崎 「ああ。一人暮らしのお年寄りはきっと寂しい。会話はもちろん、感情を分かち合える相手がいれば最高だ。その上掃除もしてくれ、風呂にも入り清潔だ。完成すれば大ヒット間違いない!今出川!何とかならないか⁈」 今出川 「実は試作段階だか感情を分析し学習するAIも開発中なんだ。ただ、それには生の音はもちろん映像に加えてその場の雰囲気、つまり臨場感溢れる本物の”気“がソースデータとして必要なんだ」  一同はしばらく沈黙してしまった。
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