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すると、それまでずっと黙っていた鞍馬口が口を開いた。
鞍馬口
「よし!少し早いが忘年会を兼ねた慰労会をしよう。場所は九州だ」
11月下旬の日曜日。大相撲の千秋楽がTV中継されていた。
いよいよ大詰め、優勝が決まる一戦が始まる。
よく見るととさきほどからTV画面に映る向こう正面に違和感がある。審判席の後ろで男四人の動きがなんだか奇妙だ。
左端の男は土俵の東にスマホを掲げている。
右端の男は土俵の西にスマホを掲げていた。
極め付きは、中の二人だ。
両手に持っているのは空のペットボトルだった。
さあ、制限時間いっぱい。力士は気合十分。鋭い視線が火花を散らす。行司の軍配が返り力士同士がぶつかったった。すると、ペットボトルを持つ手が空を切り始めた。
「はっけよい! のこった! のこったぁ!」
大歓声が湧き上がる。
「あなた。すごい熱戦ね」
「ああ、まれに見る名勝負だ」
「でもさっきからペットボトルの動きが気になるわ」
「いや、むしろ邪魔だ。気にさわる」
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