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闇雲に走っていたつもりだが、いつの間にか孤児院の前に来ていた。
子供たちに囲まれているシスター。
カリンだ。彼女も俺達の幼馴染。
「あ、エンジュだ」
「エンジュおかえりー」
子供たちに気づかれ、囲まれた。
走って来た子供たちとは対照的に、てくてくと歩いてくるカリン。
「どうしたのエンジュ、捨てられた子犬みたいな目をして」
「……俺そんな顔してる?」
「してる。まあ入りなよ。お茶ぐらいご馳走してあげるから」
温かいお茶を飲みながら、ぽつりぽつりと俺はユズリハとのことを話した。
「へー。ばかだなあ」
直球で言われてヘコむ。
「そりゃ俺ばかかもしんないけどさ、もうちょっと言い方ってもんが……」
「ばかなのはユズリハだよ」
「はっ!? ユズリハがばかだったら俺らどうなるんだよ」
「自分の臆病さで大事な人傷つけちゃどうしようもないばかだろ」
「……大事な人? え? 俺が? いや違うか……ん? 俺?」
「きみー」
両手で指差されたが実感は全然ない。友達のつもりではいたが大事な人となると大袈裟な気がする。
「まあ私の顔に免じて話聞いてやってよ」などと言われて早々に追い出されてしまった。
渋々研究所の方へ向かっていると、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
雑踏の中だ、気のせいかと思ったが、見覚えのある人影を見つけてしまった。
ユズリハが。走って、俺の名前を呼んで、俺を探している?
右足がつまずき、ぐら、と倒れそうになったのを見て俺は駆け出していた。
「ユズリハ! 大丈夫か!?」
「……エンジュ……ごめんなさい……」
普段走ることなんてしないから息も切れ切れのユズリハを抱え上げ、病院に行こうとすると止められた。
「大丈夫だから……降ろして……」
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