奇妙なチラシ

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奇妙なチラシ

 僕、新井朔太郎(あらいさくたろう)は2ヶ月前に大学生になったばかりの一年生だ。  初めてのひとり暮しだってそれなりに順調だったはず……なんだけれど。  異変に気付いたのは入居してから一ヶ月も経たない頃。どうやら僕は気付かないうちに幽霊と同居してしまっていたらしい。  変な物音がしたり電化製品がおかしくなったり。それにやたらと怖い夢を見るようになってしまった。  それでも最初は気のせいだと思った。  けど。  ある日、大学生になって初めての友達が僕のアパートに遊びに来た。部屋に着くまでは『朝までゲームしようぜ』なんて言って盛り上がっていたのに、部屋でゲームをし始めて30分も経たないうちに友達が帰ると言い始めた。  びっくりして、どうして? と尋ねる僕に友達は言い難そうに口を開いた。 『だってこの部屋、何かいる』  薄々感じていたことを他人に言われてしまって、僕は見て見ぬふりができなくなってしまった。  引っ越したい。  そうは思ったけれど契約したばかりの部屋を引き払って別の部屋に住みたいだなんて、申し訳なさすぎて親には言えない。  働こう、と思った。  バイトしてお金を稼いで引っ越ししよう。  そんなことを考えていた矢先、ポストの中に変なチラシが入っていた。『夢、買います!』とデカデカと書いてある。  夢を、買う……?  夢って売り買いできるようなものだっけ? と首を傾げて、『悪夢高価買取!』の文字に頭痛を覚えた。  普通に考えたらイタズラだ。  でも、もしも本当だったら……?  そんな考えが浮かんでしまって、気が付けばチラシと財布とスマホだけを持って外に出ていた。  チラシとにらめっこしながら地図の通りに歩いていくと、鄙びた商店街の端っこに古びた店があった。看板に『カフェ夢屋』と書いてある。  夢屋はあった。けれど夢の買い取り屋ではなくカフェらしい。  なんだ……とちょっとガッカリして、でもせっかくここまで歩いてきたし、と中に入ってみることにした。
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