前編

1/1
前へ
/3ページ
次へ

前編

「はぁ」 俺、幸島航大(ゆきしまこうだい)は今、ため息をついていた。 理由は陸上大会に向けて練習をしていたら、同じ種目の選手候補の奴に足を引っかけられ転倒して足を骨折したからだ。 そのことを先生に言っても証拠がないと言われる始末。 しかもこの怪我のおかげで大会に出れない。練習もできない。足もなまっていく。 そんな時、窓をたたく音がした。 その音でふと窓を見るとベランダにフード付きのパーカーを着た人が立っていた。 そしてその人はこういった。 「痛みコレクターのキヨです。あなたの痛みコレクトして良いですか?」と そしてその人は、少し開いていた窓から中に入ってきた。 「幸島航大さん。痛みコレクトして、いいですか?」 「なんで、名前知ってんですか?」 「それは、コレクトする取引相手ですからね」 コレクト……確か、コレクションって意味だったよな…… 「痛みをコレクトするってどういうことなんですか?」 「それは、あなたの痛み。えっと外傷でも内傷でもなんでもいいんですよ。私たちの世界の娯楽になるような痛みをコレクトするのが私たちコレクターの仕事です。」 私たちの、世界……? 「私たちの世界は次元が違うんです。なので、あなたの痛みもらっていいですか?」 痛み、がなくなったら、怪我無くなるのかな……明日から走れるのかな……? 「いいですよ。痛み、あなたにあげます。キヨさん」 「承知しました。ありがとうございます」 キヨさんはパーカーのポケットから、黒いノートを出して、俺に向けた。 そして、なにかを唱えた。 その瞬間俺の足から痛みが消えた。 「あっ」 「ありがとうございます。いい痛み、頂戴しました」 「……」 そして、キヨさんは立ち去って行った。 そして、俺はつぶやいた。 「くそが」と
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加