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これが、母が聞きたいことなのかは分からないが、わざわざ「友達がいない」などと言って、母を心配させる必要もないだろう。
「そういえばお母さん、次はいつ、夜お仕事に行くの?」
彩はカレンダーを見てそう尋ねた。母が夜仕事に行く日には、カレンダーに青ペンで月のマークを書くことにしていた。ただ、母の仕事の予定が立つのはある程度まとまっていて、カレンダーに書かれている月マークは昨日が最後だった。
「あぁ、そうね。次は二週間後になったの。またカレンダーに書いておくね」
「うん」
次に幸と会える日が分かり、自ずと浮かぶ笑みを隠すように彩はハンバーグを箸で切り、口へと運んだ。
*****
二週間後の夜、いつものように家を抜け出した彩は、幸の待つ空き地へとやってきた。彼女は変わらぬ笑みで彩を迎え、つつがなくお茶会は始まった。
学校のクラスメイトとは違って、幸と話すときは慌てなくてもよかったし、笑いたいときに笑って、話したいときに話すことができた。だからこそ、彼女との時間が大事だったし、いつの機会も楽しみにしていた。
幸がクラスにいたら、きっと学校はもっと楽しいところになるのに。彩はそう思うが、口に出すのはなんとなく気が引けた。
少しの沈黙が過ぎ去ったあと、幸がそっと口を開いた。
「ねえ、あやちゃん。今度、一緒にお祭りに行かない?」
「お祭り?」
首を傾げた彩に、幸はひとつ頷いた。そういえば、近々村の祭りがあるのだと学校で先生が言っていた気がする。
いつもの夜より早い時間に待ち合わせて、ふたりで祭りを回らないか、と幸は言った。
「お店も出るし、あやちゃんと行きたいなって」
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