嘘をつくのを辞めた社長は甘すぎる

1/6
前へ
/43ページ
次へ

嘘をつくのを辞めた社長は甘すぎる

翌日の昼休み、私は社長室の前で扉を開けるか悩んでいた。 昨日、あんなことがあった手前、初樹さんと会うのが気まずくないと言えば嘘になる。 そんなことを考えていると、まだ私はドアノブに触れていないのに社長室の扉が開く。 「入らないのか?」 いつもと何も変わらない表情で出てきた社長につられて、私は社長室に入り、いつもの場所に座る。 「あの……!」 「どうした?」 私は勇気を出して、口を開いた。 「もうあんな嘘はつかないで下さい」 そうはっきり言った私に社長は、何故か少しだけ悲しそうな顔をした。 「俺の好意など君は要らないことは分かっている」 その表情と言葉はやっぱり本当に私を愛しているようで。 「……私には初樹さんのことが分かりません」 「だろうな」 「だから……素直に話して下さい。これでも、一応私は貴方の婚約者です」 その言葉に社長は驚いたように私と目を合わせる。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加