51人が本棚に入れています
本棚に追加
「初樹さん、何故私に婚約を申し込んだんですか……?」
もう初樹さんは嘘をつくことを辞めたようだった。
「花重を愛しているから」
そう言って、微笑む初樹さんは嬉しそうだった。
「じゃあ、なんであんな嘘を……!」
「花重を逃したくなかったから。本心を言って、拒否されるのが怖かった」
「前に言っただろう?両親は忙しい人だったと。一度だけ、子供の頃に本心を言ったことがあるんだ」
「『もっと一緒にいて欲しい』と。そうしたら『我儘を言うのは辞めなさい』と怒られたよ」
そう話す初樹さんは昔の自分を懐かしんでいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!