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俺の婚約者になってほしい
「噂」というものを完全に信じるタイプではないし、その中には嘘も混じっているだろう。
それでも、その相手と関わる時に噂が頭をよぎらないなど無理な話で。
クビを宣告されるかもしれないと恐れていた私に、社長はこう言った。
「倉本 花重、俺の婚約者になって欲しい」
突然の意味の分からない言葉に私は固まっていた。
「え……あの……」
「出来ないのか?」
「いや、出来る出来ないの話ではなくて……もっと説明が欲しいです」
「……」
「社長?」
社長が椅子から立ち上がり、私の前まで歩いてくる。
初めて目の前で見た社長は、私が思っていたより身長が高くて少しだけ驚いてしまう。
「なんて言ったら、俺の婚約者になってくれるんだ?」
「っ!?」
「えっと……冗談ですよね……?」
私の問いに社長は何も答えず、しばらくじっと私と目を合わせていた。
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