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<1・石が流れて木の葉が沈む。>
『離せ、何をするんだ!?』
両手を抑えつけられ、私は必死で抵抗した。
何か、とてつもなく恐ろしい事が起きようとしている。これからの事など何一つ説明されていないのに、それだけははっきりとわかっていた。
これはきっと、非合法なことだ。
同時にとてつもなく残酷で、私の人としての尊厳を踏みにじる行為に違いないと確信していた。
そうでなければ、家でのんびりと読書をしていただけなのに、無理矢理こうして拉致されるなんてことになるはずがない。ああ、母さんと父さんは無事だろうか。私を連れて行く時、男たちに随分酷く殴られていた様子だった。あのまま撃たれたり、殺されたりしていないだろうか。私自身のことも不安で仕方ないが、彼らがどうなったのかわからないのも気がかりでならない。
『大人しくしろ、このじゃじゃ馬娘め!』
『あぐっ』
暴れていると、思い切り拳が飛んできた。頬に灼熱。唇が切れ、血の味を覚える。頭蓋骨がぐらんぐらんと揺さぶられて、視界がぐるぐると回った。ああ、なんて忌々しい。自分が男だったら、もう少し屈強だったら、こんな奴らさっさとやっつけてやれたのだろうか。やっぱり、自分も格闘技の一つくらいやっておけば――いや、心得のある父さんがあんなにあっさりやられている以上、自分ごときが多少齧ったところでどうにもならなかったかもしれないが。
脳震盪を起こしたのか、一気に体の自由がきかなくなった。その間に、私はあっさりと固いベッドに押し付けられてしまう。
『確認する。●●●●だな?』
リーダーらしき覆面の男が私の名前を呼んだ。合っていたが、答えてやるつもりもない。ただひたすら射殺さんばかりに睨みつけてやると、彼はそもそも返事など期待していなかったのか、私を見てふんっと鼻を鳴らした。
『しっかり固定しろよ。相当痛いらしいからな、暴れられたら叶わん』
『イエス、サー』
痛いって、なんのことだろう。男達は私の意思など完全に無視して、ベッドにまず両手を固定してしまう。それだけではない。私が来ていたワンピースの裾をまくりあげると、あろうことかそのまま下着を引きずり降ろしてきたのだ。
『いやあああああああああ!やめろ、やめて、なにをっ!?』
『安心しろ、レイプしようってわけじゃない。……まあある意味もっと辛いだろうけどな』
いくら足を蹴っ飛ばしても、抑えつけられていてはどうしようもない。女性として一番恥ずかしいところを丸出しにされて泣きたくなった。こちとらまだ処女だというのに、なんでこんな目に遭わなければいけないのだろう。
しかも連中は私の足を大きく開いた状態で固定してしまう。
『悪く思うなよ、お嬢ちゃん。……これも、上の命令でな』
リーダーの男が持ってきたのは、謎の注射器。その先には、何やら得体のしれない紫色の液体が大量の詰まっている。
ガンガンと鳴り響く警鐘。まさか、まさか、まさか。
『恨むなら……検査で適合しちまった自分を恨むんだな』
男がゆっくりと注射器を私の股間に近づけてきた。そして。
『ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
下腹部から遡ったすさまじい激痛に、私は断末魔のような叫び声をあげることになるのである。
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