<3・使っている鍬は光る。>

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「……あたしはまだなんとかなるけどさ。正直不安だよ。今のままじゃ、あたしの班の子たち過酷な戦場で生き残れそうにないし。……エンジェルは究極兵器と言われてるけど、それでも死者が出ないわけじゃない。機体ごと一気に潰されて死んじゃった子も過去にはいるし、焼き払われた子もいるし」  考えたくないけどね、とナンシー。 「それでも、選ばれし子供、である以上あたし達が戦うしかないんだよね。……ったく早く政府ももっとエンジェルの量産型出して欲しいよ。誰でも使える機体ってことになれば、もっと効率的に敵と戦えるし、物量作戦だってできるはずなのにさー」 「そうだな……」  特殊機構搭載超電動兵器・エンジェル。  この兵器が特殊である最大の理由は、乗り手を選ぶということになる。この機体の仕組みがどうなっているのかは全く知らないが、どうにも特殊な遺伝子などの条件が揃った人間でないとまともに扱うことができないというのだ。神経回路を繋ぐ際に適合率がどうとか、負担が大きくてどうたらとか、そう言う話を以前聞いた気がするが全然よくわからなかった。  この兵器を乗りこなしている人間が“選ばれし子供”と呼ばれるのはそのためである。  不思議なことにそういう子供は孤児に多いらしく、定期検査で引っかかった子供は孤児院から軍に連れてこられ、強制的に訓練を受けさせられることになるのだ。ケイシーもダンもナンシーも、自分達の班長であるシュラもみんなそのクチだと聞いている。 「エンジェルは強力だけど、特定の遺伝子を持った子しか操縦できないってのは大分ネックではあるな。それで戦力があんまり増やせないし……一人殉職するだけで戦力低下が著しい」  白米を口に運んでケイシーは言う。 「まあ、そんなことは研究開発部の者達もわかってるだろう。俺はそのうち、量産型が出てきてバンバン普通の軍人たちが機体に乗れる時代が来るとは思ってるんだけどね。あるいは、遠隔操作できるドローンとか。今のままじゃ、モンスターとこっちの戦力差がありすぎる」 「物理的な数がなー……圧倒的すぎるんだよなー、モンスター」 「ほんとよね。あれ、マジでどっから沸いてきてんだろね。百年前も、海の中から湧いて出たとか山の奥から出てきたとかいろいろ言われてるけど、結局正体不明なんでしょ。だから、怪談とか出てきちゃうんだよねえ」 「か、怪談!?」  がたたっ!と派手にデンが椅子を鳴らした。そういえば、とケイシーは思い出す。  この図体のでかい親友は、モンスターならどんなにグロくても平気なくせに――オバケの類となるとてんでダメ、ということを。
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