<3・使っている鍬は光る。>

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 自分達はみんな捨て子とか親が死んだとかであるはずなので、あれが自分達の母親というオチはさすがにないだろう。ただ、昔死んだ先祖の霊が憑りついている、というのは強ち笑えないことである。  何故なら百年前の戦争の頃は、人権を無視した酷い生体実験も珍しくなかったときく。――未だにモンスター相手とはいえ、軍人として戦い続けている子孫を警告するためとか、そういう理由で憑りつくこともあるのではなかろうか。 「え、え?あれ、呪いなの?どっかの女の人に呪われてるのオレら?」  それを聞いて、顔色を紙のように白くしているのがデンである。筋肉ムキムキ男が、今にも倒れそうになっているではないか。 「と、とりあえずお祓いってどこに行けばいいんかな?きょ、教会とか言ったら助けてモラエマスカ?」 「はい落ち着け―。……ナンシー、さすがにこれ以上こいつをからかうのはやめてくれ。午後の訓練で使い物にならなくなったら笑えない」 「オレの心配じゃないのね!」 「あははは、ごめんごめん。冗談ダヨー、気にしなくてイイヨーダン」 「棒読みどうも!」  大男はマジで泣きそうになっている。おーよしよし、とこれも親友の務めだとケイシーはその背中を撫でた。 「……君達」  その時だ。すぐ傍から、静かな声が聞こえた。あれ?とケイシーは振り返る。  いつからそこに立っていたのだろう。片付けるところだったのかおぼんを持った状態で立っているシュラがいる。長い黒髪青眼のの美しい青年は、能面と揶揄される眉をわずかにひそめていた。彼が自分の部屋ではなく、食堂に来るのは少々珍しい。 「今、夢の話をしていたか?」 「え?あ、うん。女の人が拷問される悪夢を見るって」 「……その話、あまり大っぴらにしない方がいい」  え、とケイシーたちは顔を顰める。シュラはナンシーを見て言った。 「私も似たような夢を見ている。……ナンシーの班の、サラもそうだったはず」 「あ、うん。そう言ってたけど?」 「さっきたまたま、サラが上官にその件を相談しているのを廊下で見た。……その時の上官が、随分と怖い顔をしていた」  あれは、と彼は続ける。 「恐らく、上官は何かを知っている。呪いなのか、あるいは何か別の原因なのかは知らないが。私の勘が、そう言っている。……君達も、気を付けた方がいい」  何それ、とケイシーは皆と顔を見合わせた。  じわじわと垂れこめる暗雲。その正体を、自分達はまだ誰一人知らないような気がして。
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