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普段は堅苦しい敬語など使わない間柄でも、ミーティングの時は一応上官と部下なので立場通りの話し方を通す彼らである。シュラの近くに座っていたナンシーが小さく“ありがと”と囁くのが聞こえた。そんなナンシーの隣では、小柄なサラが青い顔で俯いている。
明らかに具合が悪そうだが、大丈夫だろうか。
――そういえば、サラもあの悪夢を見てるって、相談してたんだよな……。
数日前のやり取りを思い出した。
先日見た時よりさらに顔色が悪いような気がするが、何かあったのだろうか。
心配になったのはナンシーも同じなのだろう。出撃直前、トイレの前でナンシーとサラがこんな話をしていた。恐らくナンシーが気になってサラに体調はどう?とでも訊いたのだろうが。
「……ナンシー班長。ナンシー班長はまだ、気づいてない、ってことでいいんですよね?」
「気づいてないってどういうこと?サラ」
「そう尋ねるってことは、そうなんですよね。わたし……夢を最初に見た時から、そうかもしれないって思ってたんです。だってあのエンジェルって兵器、わたし達ずっと乗ってるのに……その仕組みを誰も知らないじゃないですか。どういうメカニズムで動いてるのかもわからないし、なんでモンスターに有効打を与えることができるのかも全然わからない。……何かおかしいって、そう思ったことありませんか?」
わかっちゃったんです、わたし。
サラはおさげにした髪を落ち着きなくいじりながら、視線をさ迷わせて言ったのだ。
「……本当に、戦うべきなのか、どうか。いえ、わたし……わたし達に選択肢なんてないって、知ってますけど……うう、ああ……いえ、すみません。こんなこと、班長に言ってもしょうがないのに……」
彼女は一体何を言いかけたのか。
この時ナンシーはきっと想像もつかなかったことだろう。もちろん、それはケイシーも同じ。
否、想像することなんかできなかったはずだ。後に自分があのような行動に出るなんて、ケイシー自身まったく予想もしていなかったことなのだろうから。
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