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「……マジか」
そして、デンは意外な言葉を口にした。
「実はさ、他の奴にもいるんだよ、同じような夢見てる奴。まだ見たことない奴もいるみたいだけど。みんな自分によく似た女が気持ち悪いことされる夢だってさ。何なんだろうな、アレ」
恐らく、気になっているのは同じことだ。
「……ひょっとして、オレらの出生と何か関係してる、のかね」
「…………」
この寮にいるのは、ほとんどが十五歳の少年兵たち。隣の女子寮には、同じく十五歳の少女たちが集められている。全員、この国で“モンスター”と戦うため、選ばれた子供達ばかりだ。
全員身寄りのない子供であること、特別な素質を持っていることが共通している。特別な素質――それは、ある特殊な“ロボット”を動かす才能に恵まれた者達だった。そのロボットがなければ、この世界の人間達はモンスターと戦うことができないのである。
自分達は神に認められた“戦士”として、この国はもちろん世界中から注目され、賞賛される存在だという。いまいち実感はないが、時々町を歩いていると握手を求められたり写真を撮られたりするからきっとそうなのだろう。世界を守るヒーローであり、みんなに愛され認められるというのは悪い気がしない。敵が人間ではなくモンスターだから、罪悪感が薄いというのも大きい。
ただ、それはそれとして不思議に思うこともあるのだ。何故選ばれた子供達はみんな両親がいないのだろう、と。
ケイシーも、目の前のデンも同じだ。二人揃って、赤子の時に孤児院の前に捨てられていた子供だと聞いている。当然、父親の記憶も、母親の記憶もない。
「……あんま、深く考えてもしょうがないさ」
気にならないと言えば嘘になる。
だが正直なところ今の自分達にとって一番大事なのは、自分を捨てた恥知らずな両親のことではないのだ。
「それよりも俺は、今日の教官の機嫌が良いかどうかの方が気になるな。……水泳訓練再びはごめんだ」
「ひいいいいいいいいい思い出させんなよ馬鹿ァ!」
ケイシーの言葉に、友人は大袈裟に頭を抱えてその場にうずくまった。その姿が面白くて、ついつい笑ってしまうケイシーだった。
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