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<2・習うより慣れよ。>
この世界にモンスターが現れたのは、今から約百年ほど前のこと。
その頃世界はまさに混迷の極みにあった。北の大国と南の大国。二つの国とその同盟国がそれぞれ手を組んで、世界大戦の真っただ中にあったのである。
教科書によれば、元々二つの大国は宗教を巡って対立していたというのだ。それぞれ自分達の神様が正しい、相手は邪教だと言っていればそりゃ仲も悪くなるだろう。戦争が勃発するまで、長い長い冷戦があったとされている。緊迫した状況の中、諸外国はなるべく火種にならないよう、注意深く両国の動向を見守ったり、緩衝材になったりということをしていたらしい。
しかし、宗教を巡る争いというのはいつの時代も難しいものである。
商売のために北の大国に渡っていた、南の大国の営業マン。当時、二つの国は冷戦状態に近いものがあったとはいえ、まったく行き来できない状況ではなかった。仕事のためにやむなく互いの国を行き来する民間人は少なくなかったのである。
そんな南の営業マンが、スパイを疑われて北の大国に捕まった。南の大国は彼は民間人だと主張し、引き渡してくれるよう根気よく交渉したものの、北の大国の政府は受け入れなかった。南の大国で捕まった北のテロリストを代わりに解放しろと要求してきたのである。
ちなみにこちらのテロリストの方は、恐らく本物の犯罪者だったと思われる。小さな爆弾テロを起こし、さらには国の中枢機関を爆破する計画を立てていたことが明るみに出ているからだ。
このテロリストは国際テロ組織の幹部だということもわかっており、当然南の国としては安易に条件を呑むことなどできなかった。そうこうしているうちに、北の国は痺れをきらして営業マンを公開処刑。そのやり方があまりにも惨たらしかったがために(しかも情報によると散々拷問した後だったとされている)、南の国を激怒させるには充分だったのである。
――南の国が報復を決意するまで、さほど時間はかからなかった。
南の国は、捕まえていたテロリストを自分達も処刑。元々死刑判決が下っていたので、その執行を早めた形である。
結果、北の国が南の国に宣戦布告。一気に二つの国は戦争状態に突入し、多くの同盟国がそのうねりに巻き込まれていく形となったのだ。この世界の国々のほとんどが、北側諸国か南側諸国のどちらかを支援し、親密な関係を築いている。ごくごく一部の中立国家を除き、とてもじゃないが見て見ぬふりなどできなかったためだ。
通称、南北世界大戦。
海と空を中心とした戦いとなったこと、両国に充分すぎるほど軍事力と余力があったことにより、世界は何十年もの間長く長く戦乱の渦に飲まれることとなった。
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